モールからの帰り道、私の心は千々に乱れていた。私を信頼して、家計を任せてくれている夫をまたしても裏切った形となったことは、申し訳ない気持ちで一杯だった。


内藤にお金を渡してしまった私の判断は、誰からも非難されることはあれ、褒められることはないのはわかってる。


正直、あの程度のお金で、内藤が引き下がってくれるかも疑問だ。だけど、ない袖は振れない。


あとはあの男の良心に賭けるしかない。私は、最後に精一杯のメッセージを彼に送った。綺麗事だろう、もう私の前に2度と現れてほしくないという気持ちは、もちろんある。


しかし、彼がなんとかもう1度、人生をやり直してくれる気になってくれれば、私はそれを嘘偽りなく願っている。少なくとも、私に彼の不幸を願う理由は全くないのだから。


気がつけば、私はいつものように、キッチンに立ち、夫と次男を迎える為の夕食の準備に取り掛かっていた。


いつもと変わらぬ日常、だけどそれがどんなに尊く、大切なものなのか。私は4年前に思い知った。内藤のことは、再会したことも含めて忘れなければならない。彼の存在は、もう私の人生に必要がないのだから。


テレビから流れるニュースをBGM代わりに、私は手を進める。今日は夫も次男も大好きなカレー。


そうか、そう言えば、あの日もカレーだったな。珍しく夫がキッチンに入って、作ってくれた大失敗作を涙を流しながら、作り直したのを思い出す。


切なくも、なにか胸が熱くなる思い出に、私が、少し感慨に浸っていると、インターホンが鳴った。


誰だろう?そう思ってモニターを見た私の身体は、次の瞬間に固まった。


そこに内藤の姿が映し出されていた、から・・・。