アーレスから、三日後に実家を訪問すると告げられたのは朝のこと。
そして昼を過ぎた今、いずみはお土産に何を持っていこうかとジナとジョナスとテーブルを囲んでいるところである。

「伯爵さまは社交的な方だって聞いているわ。きっと目が肥えているもの、ありきたりのものじゃ駄目よね」

「奥様が作るものなら何でも珍しいと思うけどなぁ、俺ぁ」

ジョナスがにかっと笑う。
たしかに、異世界である日本のものなら何でも珍しいだろうとは思うけれど。
珍しいからいいというものではないのだ。お茶菓子を持っていくにも、できるだけ相手に喜ばれるものがいい。

「でも好みとかがあるでしょう。ジナはご実家にお勤めだったのよね。奥様の好みとか……なんか参考になることを教えてもらえないかしら」

話を振られたジナも、頬に手を当て困ったように視線を巡らす。

「そうですね。ですがバンフィールド伯爵家は領地経営がうまくいっておりますから、裕福でなんでもお持ちですしねぇ……」

まさに不足がないというわけだ。貴族が欲しがるもの自体がいずみには分からないのに、どんどんハードルが上がっていく。

「何でもいいのよ。ヒントになるようなこと。食べものじゃなくてもいいわ。好きなものとか、大事にしているものとか」

「そうですねぇ……」

ジナは立ち上がると、テーブルの周りを歩き出した。
じっとしているよりも動いているほうが考えがまとまるタイプのようだ。