それからさらに三日後、アーレスは屋敷に戻った。
傷口もあらかた塞がり、抜糸も終えた。通常ならばひと月は安静にしなければならないのに、と驚異の回復力に医者は驚きを隠さなかった。

その間、イズミも騎士団宿舎に泊まっていたため、久々の屋敷である。

「みんな、ただいま!」

「おかえりなさいませ、旦那様、奥様」

迎える使用人たちも笑顔だ。

「疲れたでしょう。今日はゆっくりしてくだせぇや」

ジョナスが用意してくれた料理は肉豆腐とタコと青菜の酢のものだ。

「見たことのない料理だな」

「アーレス様がいない間に、奥様があれこれ試作していたものですよ。本当はご自分で作りたかったんでしょうが、今日はお疲れでしょうから俺が準備しておきました」

勝手にすいません、とジョナスが続ける。
だが、和食が食べたい気分だったので、いずみは嬉しかった。

アーレスも顔をほころばせ、「では皆で一緒にいただこう」と片付けに奮闘するジナたちに声をかけた。

「ちょっとお待ちくださいねぇ」とジナが悲鳴に似た声をあげ、「イズミ様、騎士団はどのような場所でしたか」と子どもたちがいずみの周りに群がって質問する。

いずみは帰ってきたのを実感し、ホッとする。この屋敷が、迎えてくれる人たちが、自分の帰る場所なのだと改めて実感したのだ。