急いで正門をくぐるとそこには、生徒達の送迎用の高級車の行列ができていた。


この学園のいつもの風景だ。


車から降りてきた伊織さまは、5秒もしないうちにファンの女子生徒達に囲まれてしまった。


これも、いつもの風景だ。


眉目秀麗な上に、家柄や財力の面でも抜きん出ている彼が注目されないわけはない。


伊織さまは、ウンザリした顔をしたけれど、集まってきた中には知り合いの女の子がいたのかその子と少し話すと笑顔が溢れていた。


それを見た時に、胸の奥がギリッとねじられたような気がして一瞬だけ息苦しくなった。


あれ、どうしたんだろ私。


こんなの毎日見てるのに。


朝からご馳走を食べすぎたせいで、胸焼けがしているんだろうか。


それ以上彼の方は見ないようにして、走って1年の校舎に入っていった。