「つむぎは、アップルパイとミルクティーが好きだったよな。今持ってこさせるからな」


「あ、はい。伊織さま、ありがとうございます」


上質なダイニングテーブルの席についていた私は、隣の席に座る伊織さまに愛想笑いをしていた。


ここは、伊織さまと奥様が食事をするプライベートなダイニングルームだ。


よくテレビなんかで見る数十メートルはありそうな長いテーブルのある大きなお部屋もあるにはあるけど、それはお客様が来た時に使用されているだけ。


今、私がいるのはわりとこじんまりとした一室だった。


そこに、伊織さまと私、そして執事の南さんの3人で話し合い、というかこそこそと密談をしていた。


「あ、あの、私の好きなものを知っててくださって、あ、ありがとうございます」


緊張しながら、たどたどしいお礼を言うと伊織さまは優しく微笑してくれた。