藍たちが解剖した老人の身元が判明したのは、解剖から一週間が経った頃だった。

藍たちは資料の作成や、別の解剖したご遺体の死因を調べていた。その時。

「……あの、こちらで父が解剖されたと……」

そう言って研究所にやって来たのは、グレーのトップスにジーンズという地味な格好をした四十代の女性だった。その後ろにはブレザーを着た女子高生がいる。

どこか必死そうな女性を、女子高生はスマホをいじりながら冷ややかな目で見つめていた。髪を茶髪に染め、大きなピアスを耳につけ、ブレスレットをつけてスカートを折り曲げている。真面目な生徒とは言えないだろう。

「お話を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」

正人がそう言い、女性を別室へと案内する。女子高生はスマホをいじったままその場に立っていた。

「よかったら、座ってください。あとお茶です」

大河がニコニコ笑い、女子高生に椅子とお茶を勧める。女子高生はため息をつき、言った。