9話「有名人」




 泉が連れてきてくれたのは水族館だった。
 しかし、普通の水族館ではない。イルカのショーがとても凝っており、光や音、そして映像との融合が売りになっているようだった。
 

 「すごい!ここに来て見たかったんです。動物で1番イルカが好きなんです。」
 「喜んでもらえてよかった。緋色ちゃん、興奮しすぎて、敬語に戻ってるよ。」
 「あ………ごめんなさい。」
 「いいよ。ショーの席はもう取ってあるからゆっくり館内を見て回ろう。イルカに触れる時間もあるみたいだし。」
 「うん。」


 泉は自然に緋色の手を繋いで、経路を順番に歩いていく。
 緋色は少しドキッとしたものの、少し落ち着いていた。それは、道中に彼と沢山話をしたからかもしれない。
 泉の気遣いに感謝しながら、緋色は初めてのデートを楽しんでいた。
 一つ一つの水槽をジッと見つめたり、写真を撮ったり、2人で神秘的な空間を堪能しながら進み、イルカのショーでは歓声を上げながら楽しんでいた。