8話「白碧蒼」





 緋色のクローゼットの中には、沢山の洋服がは入っていた。
 昔の緋色はワンピースやスカートが好きだったようで、綺麗な花柄や鮮やかな色、ベーシックなものなど、沢山の衣服が並べられていた。
 思い出せない頃の自分は洋服が好きだったのだろうと、ただ思っていただけだった。着ていく服に困らなくていいというだけで、特に何も思っていなかったけれど、今日はその頃の自分に感謝していた。

 デートというからには、少しはおしゃれをしなければ申し訳ないと思ったのだ。
 泉と出会った時は鮮やかな着物だった。綺麗にしてもらった姿を彼は見ていたはずだ。
 それなら、普段の自分を見て、彼はどう思うのか。それが心配だったのだ。

 緋色はかなり早起きをして、クローゼットを眺めていた。


 「んー………大人っぽくロングのスカートかな。それともやっぱりワンピースかな。」


 緋色は服を体に当てては、鏡で確認していた。
 泉はどんな服装の女性が好きなのだろうか。
 そんな事を考えては、ハッとするのだ。

 もう結婚も決まっている相手。しかも、相手は小説のネタのために結婚。自分はお見合いをしたくないからという、理由つきの結婚だ。
 恋愛をしてからの結婚ではないのだ。