ケータイ小説 野いちご

死神探偵小早川曼は今日も。

2・裏切りと面影





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2-おやすみの愛しさ


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休憩時間に立ち寄る喫茶店の隣にはこじんまりとしたお洒落な花屋がある。


ちょうど軽食をとって昼ちょっと過ぎ頃に店を出るといつも決まってブラウンピンクの髪をシニヨンにまとめ、腰にエプロンを巻いた花屋の若い女の店員が店の前に飾られた花にスプレーでシュッシュッと水をかけている。


歩いて10分程の距離だろうか。
A社のビルの一角で働く入社5年目、サラリーマン“ 古手川 シュウジ”にとって彼女は上と下に挟まれてストレスばかりが構築される毎日の自分を唯一癒す女神だった。

気付いた時には喫茶店に通うのは昼飯を食べるためから帰りにさり気なく彼女を見るために変わっていた。つまり古手川は彼女に“片思い”していたのだ。


いつ話しかけよう?いや、でもいきなり話しかけたら気持ち悪がられるかな?

彼女を見るたび考えてはにやけが止まらないストーカー…とまではいかないが彼女を見る事を習慣にしていた古手川はある日いつもと同じく食事をとってから店を出て花屋の前を通りかかった時、
衝撃的とも言える偶然になぜこんなにも彼女が他の女性よりも美しく輝いて見えてしまうのかの本当の真実を知るはめになった。


その日の話しだ。

「あっ!」と何かに気付いて彼女は水やりしていた手を止めて歩いて来る古手川に笑顔で手を振った。

古手川はついに自分の存在を知ってもらえたのだと勘違いして嬉しさのあまり手を振り返そうとしたのだが、彼女は古手川の脇をすり抜けてその後ろを歩いていた男性にやんわりと抱き着いたのだ。

「おかえりなさい」

「やだな、まだ家じゃないよ?」

「良いんです。ここが家じゃなくても昼間に貴方に会ったら言いたいの」

「なにそれ。そんな事言われたらこのまま仕事バックれて家に帰りたくなるじゃん」

「どうぞ?」

「だーめ。俺のこと甘やかさないで」

淡いミルクティー色の綺麗な髪、スーツの似合う美人な男は幸せそうに笑って彼女の額に軽くキスをした。


花屋の入り口に飾られた色とりどりの花をバックにキスする2人のそんな光景はまるでどこかの海外映画の一部のようで、古手川とかく通りすがりの通行人、いや、もしこの場に何百人と観客がいたら見た目の良い2人は誰からも“お似合いのカップル!”と言われ祝福の拍手を送られているだろう。

「そう言えば“お友達”元気でした?何も変わりなくて?」

「まぁね、いつも通りさ」

「でもなんだか疲れてるみたい…何かあったんですか?また事件?」

「ううん、なんにもないよ。ただ今朝帰ってそのまま仕事入ったから眠いだけ」

夜の探検隊の皆で力を合わせて白骨遺体を見つけたんだよ!なんて事は到底言えやしない。ユウトは心配そうに見つめてくる彼女にこれ以上心配をかけまいと精一杯の笑みを浮かべて誤魔化した。

「そう…あまり無理しないで下さいね?」

「うん。ありがとう」

穏やかに微笑み合う姿はなんとも絵になる2人。

それをまさに今自分の真ん前で目撃してしまった古手川は空中から落下してきた半分にヒビが入った大きなハートの岩に頭を殴られた気分になって思わず身体がよろめいた。


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