家に戻ったあたしは部屋の中でグルグルと歩き回っていた。


さっきから親指の爪を噛み過ぎて血が滲んできていたが、気にならなかった。


そのくらい強い怒りが脳内を支配している。


どうすれば千恵美を武から引き離すことができるんだろうか。


武がもっと強い態度に出てくれれば、まだ事態は好転するかもしれない。


『俺に近づくな』とか『ノドカと付き合っているから付き合えない』とか。


そんな言葉を想像しただけで顔がニヤけて、鼻血が出てくる。


あたしは手の甲で強く鼻の下をぬぐい、大きく息を吐きだした。


でも、そういう理想的な展開になるためには、武に積極的になってもらう必要があった。


照れ屋の武だから、それはとても難しい課題なのだ。


「どうすればいいんだろう。どうすれば、武はあたしだけを見てくれるんだろう」


ブツブツと呟いて、部屋の中を歩き回る。


引き続き智樹に手伝ってもらうこともできるけれど、千恵美相手になにをすれば効果的なのかわからなかった。