翌日。


父親の言動を密かに観察しても、特におかしいところはなかった。


いつも通りキッチンで食事をとり、その後新聞を広げて読んでいる。


あたしは父親より先に家を出るけれど、いつも通りなら出勤前に姿見で服装を整え、ブレスケアを飲んでから玄関を出る。


今日も、いつものルーティーンを繰り返しているように見えた。


「ノドカ、まだ行かなくていいの?」


台所で洗い物をしていた母親にそう声をかけられて、ハッと我に返った。


壁掛けの時計へ視線を向けると、もう出かける時間になっている。


あたしは慌てて立ち上がり、冷蔵庫から2つのお弁当箱を取り出した。


おかずは前日の内に準備してあるから、暖かなご飯をつめるだけで完成だ。


あたしはお弁当箱の中に手早くご飯を入れて、家を出たのだった。