今日のあの人はどうしているだろう。


こうして会えない間に、もしかしていい子ができたりしてないかな?


「ため息なんてついてどうしたの?」


あたしは窓辺の席で大きなため息を吐きだした友人、夏山真由子(ナツヤマ マユコ)へ向けてそう聞いた。


恩愛高校、3年A組の教室は今日も騒がしく生徒たちがあちこちで談笑している。


もうすぐで高校最後の夏休みが始まるので、みんな浮き足立っている様子だ。


この夏休みを使って受験勉強に励む子もいれば、片想いに終止符を打つために勇気を出す子もいる。


高校3年生の夏休みというのは、なによりも特別に感じられた。


「ノドカ……」


真由子は長い黒髪をかきあげて再びため息を吐きだした。


切れ長の目がしょんぼりと垂れている。


「悩み事?」


あたしはそう質問しながら、ノドカの前の席に座った。