今夜はごちそうをいただいてしまったし、後片づけくらいは絶対しようと決めていたのに。お酒の誘惑に完敗した私は今、周さんの腕の中。

藪さんとほのかちゃんに本当に申し訳なく思いつつも、抱きかかえられたままじっとするしかなかった。お姫様抱っこなんて初体験だし、めちゃくちゃドキドキする。


「あま、ねさん……重いのに、すみません。藪さんたちにも悪いことを……」

「ふたりには相応の礼をしておく。気にするな。それに重くもない」


恐縮する私に、彼は涼しげな顔で淡々とそう言った。そして、私を一瞥して問いかける。


「風呂には入ったか?」

「あ……入ろうと思ったんですけども」


周さんの凛々しい眉がぎゅっと寄せられたことに気づくも、私はへらりと笑う。


「帰ってから家事の残りとぉ、今夜の準備を手伝ってたら時間なくって……」

「今すぐ入れ」


酔っているせいでゆったりと言い訳していると、被せ気味でビシッと命令された。

ええ~、今から入るのは限りなく面倒くさい……! 一柳家の嫁として相応しくないと重々承知しているけれど!