求婚された翌日、綺麗に列のように並んだ茶畑で、私は手伝いに来てくれているパートの皆さんと茶摘みを行っている。

一芯二葉(いっしんによう)〟という、まだ葉が開いていない芽の状態のものと、その下の二枚の葉を摘んで新茶が作られる。葉に傷をつけないよう、優しく手摘みをしなければならない。

手際よくプチプチと摘んだそれを腰につけたかごに入れながら、パートのひとりである心晴(こはる)さんと気楽におしゃべりするのが日課だ。

心晴さんは三十五歳、二児の母で、見た目も若くて可愛らしい人。気が合うし、とても頼りになるので、困ったときはいつも相談に乗ってもらっている。

今も、さっそく昨日の衝撃的な出来事を話したところ。


「てなわけで、もしかしたら都会へお嫁に行くことになるかもしれません」


すべて話し終え、一旦手を止めて大きく伸びをしたとき、茶の株を挟んで向かい側にいる心晴さんが、ぽっかーんとしてこちらを見ていることに気づく。


「希沙ちゃん……今日、何月何日?」

「四月二十五日。エイプリルフールは過ぎましたよ」


嘘じゃないです、との意味を込めて言うと、心晴さんの顔がみるみる輝いていく。それはもう嬉しそうに。