女の幸せって、なんだろう。

結婚して、妊娠して、愛する人との子供を産むことだろうか。

もし、それらを実現できなかったとしたら、私の人生は不幸なのか。


気がつくとそんな哲学的なことをぼんやり考えているくらい、今の私は良くも悪くも余裕がある生活を送っている。

あと三年で三十路になる私は、悠々自適な実家暮らしで、茶葉の栽培をしている家業を手伝う農業女子だ。

一年前に彼氏にフラれて以来、恋をすることもなく、心身共にだらけきっている。

元々、大雑把な性格のせいもあり、部屋は物が散乱しているし、出かけるときの服装もメイクも適当になってきた。

夜はだらだら晩酌するのが定番で、そのままお風呂にも入らず寝るのは日常茶飯事。

つまり、干物化しているということ。このままでは、まったく輝くことなく女としての旬な時期が終わってしまう。


……が、問題なのは、それに関してたいして危機感を抱いていないことだ。

恋愛をしたいなら友達に紹介してもらうとか、結婚したいなら相談所に登録するとか、いくらでも方法はある。それをする気にならないのは、特に望んでいないから。