「まーったく、もう!」


イライラした声と同時に、丸められたノートがあたしの頭の上にポンと落ちる。


両目をキュッとつむって、その衝撃と真央ちゃんからの叱責に耐えた。


先輩たちとの水の掛け合いっこを終えて、急いで教室に戻ったあたしのビショ濡れな姿に驚いた真央ちゃんから、厳しく追及されているんだ。


「美空ったらちょっと目を離すと、ろくなことしないんだから。なんで全身ずぶ濡れなの?」


あたしは薄っすらと片目を開けて、丸めたノートをメガホンみたいに口元に当ててしゃべっている真央ちゃんを見上げながら、オズオズと答える。


「花壇で、近藤先輩と伊勢谷先輩に会って……」


「会って?」


「いろいろあって、結果的に水の掛け合いっこ競技に発展しました」


頭の上に、丸めたノートがポンポンと連続で降る。あたしは亀みたいにキュッと首をすぼめた。


「花に水遣りに行って、自分が水かけられてどうすんの」


「はい。ごめんなさい」


「授業開始まで時間ないよ? そんなびしょ濡れじゃ風邪ひいちゃうから、早くジャージに着替えてきなさい」


「はーい」