「うー。痛いよぉ」


右腕がとても痛い。て言うか、つらい。


顔をしかめながら右腕全体をマッサージしているあたしに、隣を歩いている真央ちゃんが声をかけてきた。


「美空、大丈夫?」


一見心配してるように聞こえるけど、実際は声にだいぶ笑いが交じってる。


あたしはジトッとした目で真央ちゃんを見上げた。


「真央ちゃん、セリフに心がこもってないよ」


「だってぇ。ジャガイモの皮を剥いて筋肉痛になりました、なんて話を聞いたら笑いたくもなるでしょ」


ブフッと吹き出す真央ちゃんの血色のいい頬を、朝の明るい日差しが照らす。


今朝の白鳥学園の登校風景も相変わらず。人と車でごった返してる。


正門から正面生徒玄関へと続く道は、大勢の生徒たちの活気に満ちたおしゃべりと、木々の枝の合間から聞こえるスズメの大合唱で賑わっていた。


近藤先輩のお料理レッスン……というか、ただの夕食会を初めて受けたあの日から、三日。


放課後にコッソリ先輩の家に通って、料理の手ほどきをしてもらう毎日が続いていた。