奏音は、誰かに電話をしていた。

「ああ、久しぶり。1つ聞きたいことがあるんだけど、ルイって今どこに住んでるか知ってる?…………ああ、そうなのか。ありがとう」

成宮ルイは、奏音の遠い親戚で尚と同じピアニストだ。

とは言うものの、奏音とルイが直接顔を合わせたのは数える分しかなく、しかしその時のことは奏音はしっかりの覚えている。

とにかくルイはピアノを弾くのか好きで、1日中奏音にそれを聴かせては喜んでいる様子だった。

なんとなく、奏音は今ルイがどうしているのかが気になり、従兄弟に電話をしてみたが結局彼が何をしているのかは分からなかった。

ネットで調べてみても、コンクール以来の記事は特にない。

ただ、気になることは1つだけあった。

「いや、やっぱり偶然か…………」

ただ、根拠のないものをなるべく信じないようにしている奏音は、そのことについては深追いをやめた。

「白金南……か。高倉尚と仲が良く見えたけど、恋人なのか? いや、それはないか」

奏音は尚の行動を思い返したが、そこから読み取れるのは桜をとにかく思っているということだけだった。

奏音の目には、他の誰かを尚が考えているようには見えない。

ーーやはり、ただの知り合いなのだろうか……。音楽仲間というだけなのだろうか……。

奏音は、何かがやもやもやとしていてそれがずっと晴れずにいる。

繋がりそうで繋がらないなにかに、奏音は1人部屋の中で頭を抱えていた。