『 …あっ、起きた。 』




閉じた目をゆっくり開けると、真っ白な天井を背にした男性が私の顔を覗き込んでいた。

この人…確か、あの時車椅子に乗ってた人だ。


意識が途切れてしまったせいで、一体自分がどれだけ眠っていたのか分からない。重たい身体を起こそうとすると、車椅子の男性は『 あっ、駄目! 』と、私の肩に手を添えた。




〔 よかった。思ったより、早く目覚めたみたいだね。 〕




白で統一された部屋の中を見渡していると、自動ドアのようにして開いた壁から、あの白衣の男性が現れた。


どうやらここは、病院の病室……にしては、あまり見た事のない部屋の形だ。
私の鼓動と合わせるようにして、淡い光を帯びるベッド。机やタンス、心電図等はなく、腕に繋がれている点滴のようなものは、ベッドの下に繋がっていた。

それに、窓から覗く街の景色は、私の知っている場所とは全く違う景色だった。
先程見た近未来のような街ではなかったけれど、日本とは思えないような街並み。暗くなった空の下に輝くネオン街は、都会…と言うよりも、これが当たり前に存在する街のようで。




「 あの、私………え? 」

〔 大丈夫。きっとまた咲いてしまうけど、現時点で君の身体に咲いていた花は、治療をして…根の先は血管と繋がっているから切れなかったけど、取り除ける部分は取り除いておいたから。 〕




…素直に驚いた。


包帯で薄く覆われた腕や足には、あんなに咲いていたはずの花が、一つもない。

白衣を着た男性の言葉に戸惑いながらも、私は何となく今の状況を察した。




〔 初めまして。僕はこの病院で医師をしてる、緋衣 結(ひごろも ゆい)。で、そっちは…。 〕

『 僕は、この病室に入院してる胡蝶 柊空(こちょう そら)。結先生は、僕の担当医でもあるんだよ。 』