長い間、夢を見ていたような気がする。
真っ暗な道の中を歩いて、誰かと必死に叫び合って、お互いの気持ちをぶつけ合って。
それが誰なのかは分からないけれど、夢の中の私は身体中に花を咲かせ、花を吐き出し、涙を流しながら叫んでいた。
そして「 私の苦しみなんて分からない癖に! 」と泣き叫ぶと、その " 誰か " は今にも泣きそうな、そして苦しそうな顔をしてこう言ったんだ。
" 痛いくらい分かるよ!! "
…でも、その " 誰か " が顔を歪めて口元を抑えた瞬間、私は目覚めてしまった。
全身から汗が吹き出し、苦しい呼吸を整えながらその場を見渡す。
どうやら私は、見覚えのある部屋のベッドに寝かされていたようだった。
「 あれ、ここって…。 」
『 …椿煌?椿煌!! 』
重たい身体を起こしてみると、右手に感じる違和感。
懐かしいと感じるその声と共にそちらへ視線を向ければ、そこには、私の手を握った暒くんが居た。
「 暒くん…? 」
『 椿煌…ッ! 』
暒くんは私を見るなり、強い力で私を抱き寄せる。
その力の強さが、彼の気持ちを物語っていた。
よかった、よかった。何度もそう呟きながら私の背中を撫で、嗚咽を抑えている。
…私、過去に戻れたんだ。暒くんに会えたんだ。
ここは暒くんの部屋で、私が今居るのは、暒くんのベッド。
この柔軟剤の香りも、本棚にある沢山の本や資料も、昔撮った私との写真が入った写真立ても、全部全部、暒くんのものなんだ。
そう思うと酷く安心して、私も彼の涙につられながら、子供のように泣きじゃくって暒くんの背中に腕を回した。