「 ん…。 」




目を覚ますと、外はすっかり明るくなっていた。



隣のベッドに居る胡蝶さんはまだ眠っていて、まだ慣れない空間に、少しだけ目が冴える。
こんなにぐっすり眠ったのは、一体いつぶりだろう。

目が覚めて身体に花が咲いていないのも久しぶりだし、こんなに目覚めのいい朝を迎えられたのも同じ。
ゆっくりと起き上がってベッドから降りると、足が床に着くと共にそこだけが淡い光を帯び、心地よい暖かさで、まるで足が冷えないようにとしてくれているようだった。
裸足のまま歩いて窓際に向かうと、空を舞っている真っ白な雪。


…そうか。今、ここは冬なんだ。

相変わらず四角い建物だらけだし、空を飛んでいる機械だってある。
初めて見た景色よりは少しだけ落ち着いているけれど、私が居た時代に比べれば、ここはまさしく " 未来都市 " 。




『 ん〜……あれ、椿煌ちゃん? 』

「 あ…おはよう。私、ここに居るよ。 」




窓際に腰を下ろして景色を眺めていると、しばらくして胡蝶さんが目を覚ました。

ぴょん、と跳ねた髪を揺らしながら起き上がり、片目を擦りながらキョロキョロしているその姿は、まるで子供の様。そんな彼は、私を見つけるなり『 おはよう 』と、無邪気に笑った。




「 …なんか寂しいな。たった300年で、こんなにも変わっちゃうものなんだね。 」

『 うーん…今の時代にもタイムマシンなんて無いし、僕自身過去の景色は写真や映像でしか見たことがないんだけど、なんだかその気持ち分かるかも。 』




胡蝶さんは、ずっと窓の外を見つめている私に釣られるようにしてそう言い、窓の外に目を向けた。

欠伸をしながら背伸びをすると、動かない脚に力を込め、ベッドから降りようと手すりを掴む。震えたその手がなんだか寂しそうで、私は思わず、彼の元へ歩み寄った。