身体の節々が痛みで悲鳴を上げるも、この足を止めることなんて出来なかった。
素足で森の中を走り回り、誰にも見つからないように、更に奥へ奥へと死に物狂いで足を動かす。


どうしてこんなことになってしまったのか、どうして私はこんな身体になってしまったのか。

思い返せば思い返すほど、頭の中を埋め尽くすのは " 恐怖 " だけだった。




「 ぁ…ハァ、ハァ……ッ、」




川沿いまで来たところで力尽きた足がガクリと崩れ、その場に勢い良く倒れ込んでしまう。その時に肌と地面が強く擦れたのか、綺麗な色をした花弁が、グシャリと潰れてしまった。


…どうして、どうして私がこんな目に。




「 ぅ……う、ぁ……ゲぇッ、ぉえ、ぇ、」




透き通った川に映るのは、身体中に花を咲かせ、口から大量の花弁を吐き出す、醜い女。

顔、首、胸、腕、腹、腰、足。
身体中の至る所に様々な花が咲き散らかされ、口から吐き出された花弁は、風に乗せてどこかへ飛んでいってしまった。



このような異様な体質になってしまったのは、約三年と少し前の、17歳の頃から。
原因は不明で、こんなことは誰にも話せなかった。

最初はまだ症状が軽くて、不安や恐怖、悲しみなどを感じる度に、少しずつ腕やお腹、胸などにに花が咲き始める程度だった。でも歳を重ねる度にそれが悪化して、今では些細なことでも、次々に芽を生やし、茎を伸ばし、花を咲かし、そして吐き出すようになった。

それは、身体の中で蚯蚓が動き回っているような感覚で、引き抜こうとするものなら、耐えられないほどの激痛が走る。でも放っておけば花は枯れることを知らず、どんどん私の身体を埋め尽くしていくのだ。
だから肌から出ている部分をハサミで切り落とし、何とかして隠すしかなかった。