「あ」


後ろで声がした


振り向くと白いパーカーを着た女子が立っていた

手にはビニール袋を抱えている

雨に打たれて髪が濡れているのがわかった




もしかしてこの傘…


茶色っぽいふわふわした濡れ髪が路地の入り口から吹き込む風に煽られている

逆光になっていて顔はしっかり見えない


「飼い主さんですか?あ!飼い主希望ですか!?」


「いや、そんなんじゃないけど」


「あ、違うんですか」


わかりやすく落ち込むそいつ

なんなんだこいつ


「その猫、捨てられてたみたいで…ご飯もなにもないし、こんなところじゃ見つけてもらえないし…私の家では飼えないからとりあえずご飯だけでもって思って買ってきたんです!」


なにも聞いてないのにペラペラと話し出す女


久しぶりだった

「おれ」にこんな風に話しかける奴は