翌日、藍たちは早速遺体を解剖した。亡くなったのは、高野匠(たかのたくみ)さん。大工として働いている。

「肺が膨らんでいる。溺死の特徴ね」

藍がそう言い、大河が写真を撮る。

「血液、採取します!」

朝子が血液を採取し、聖が胃の内容を調べる。順調に解剖は進み、高野匠の死因は溺死と藍たちは判断した。

「お疲れ様です!」

解剖が終わり、大河が飲み物を配る。藍たちはそれを飲み干し、椅子に座った。

「まあ溺死だし、家の浴槽の中だから事故なんじゃないかな」

朝子がそう言うと、藍は「確かに溺死だけど、でもなぜ匠さんは溺れたのかしら?」と呟く。

「日本では浴槽に入って全身浴をする習慣があるから、諸外国と比べて浴槽で溺死する確率が高いことは事実よ。でも、その溺死する九割は六十五歳以上の高齢者。お酒を匠さんが飲んでいたなら別だけど……」

「もし、アルコールが体内から検出されなかったらどうなるんですか?」