藍と大河は、シェアハウスの住人にも話を聞くことにした。高野匠は高校を卒業してからずっと隣の県から離れている。実家に帰るのは、お盆と正月だけだそうだ。

高野匠は、あのシェアハウスで六年前から暮らしている。最近のことまでシェアハウスの人間なら教えてくれると藍は思ったのだ。

高野匠が亡くなった現場に行き、呼び鈴を押す。

「……はい」

疲れ切った声で男性が返事をした。藍は「法医学研究所の者です。お話を伺いに来ました」と言った。

しばらくすると扉が開き、目の下に隈を作った背の低い男性が現れる。

「どうぞ」

無愛想にそう言われ、藍と大河は広々としたリビングに通された。大きなテレビやソファが置かれ、天井にはおしゃれなデザインの照明が煌めいている。

「失礼します。法医学研究所の監察医、霧島藍です」

「法医学研究所でアルバイトをしている医学生の河野大河です。今回は、こちらで亡くなられた高野匠さんのことをお聞きしに来ました」