ヴァイオレットは今日も相談所に向かって歩く。最近は出張も増えて忙しい。人を雇おうかと考えているところだ。

「あら……」

ヴァイオレットは花屋の手前で足を止める。朝早くの花屋には、普段はヴァイオレットしかいないはずだった。しかし、今日はお客さんがいる。

ピンクの花柄のワンピースドレスを着たショートカットの十代くらいの少女だ。その目は、花屋に並べられたきれいな花に向けられている。

少女は花を見つめ、胸に手を当てる。そしてその青い目から涙がこぼれた。

ヴァイオレットはすぐに少女に声をかける。

「どうかされたんですか?」

少女は肩を震わせ、ヴァイオレットを怯えた目で見つめる。ヴァイオレットはお辞儀をし、言った。

「失礼いたしました。私は、ヴァイオレット・ヘーデルヴァーリと申します。このすぐ近くにある相談所でカウンセラーをしております」

「ヴァイオレット・ヘーデルヴァーリってあの……!?」

少女はかなり驚いた目を向ける。涙は驚きで止まってしまったようだ。