ヴァイオレットは、相談者が相談所に来れない場合は出張としてそこに行く。悩んでいる人を放っておくことなどできない。

列車に揺られ、ヴァイオレットは昔暮らしていた場所のような田舎へとやって来た。田舎道を歩いていると、ルートヴィッヒのことが頭に浮かぶ。彼は今、どこで何をしているのだろう。

小さな白い家の扉をヴァイオレットはノックする。木のそばには大きなブナの木が立っていて、家の場所がとてもわかりやすい。

「はい」

古びた扉が開き、肩ほどの長い金髪の男性が姿を見せる。その笑顔は無理に笑っているものだとすぐにヴァイオレットは気づいた。

「相談者のトーリス・ブラギンスキさんですか?」

ヴァイオレットが訊ねると、トーリスは「はい」と掠れた声で言う。

「……どうぞ、中へお入りください」

トーリスはヴァイオレットを家の中へ入れた。長い間掃除をしていないのだろう。部屋の隅には埃が積もっている。