高校2年生の夏休み。

好きなアイドルのコンサートへ行くなり
友達と海へ行くなり行きたい大学の過去問を買うなり…何かとお金がかかるのがこの時期。

ついに私は、
お母さんと去年から約束していた〝バイト〟が出来るようになった。

バイト先は3歳上の姉・早紀が高校時代にバイトでお世話になったファミレス。名前に因んで〝サッキー〟と愛称を付けるほどお姉ちゃんと仲の良い店長は「サッキーの妹ちゃん!?大歓迎だよ」と快く受け入れてくれた。


今日は学校帰りに寄って、その店長から説明を色々受けることになっている。普段から私ってあまり緊張しない方だとは思うけど…大丈夫かなって少し不安。

少しだけ汗ばんだ手のひらをきゅっと握り心の中で、よし、と景気づけてから事前に指示されていた店の裏口へと入った。


「こんにちはー…」

中に入ってから挨拶してみた。

が、誰も気付いていないのか出てこない。
たぶんもう少し奥に進めば厨房なんだろうけど、そこまで制服で行く勇気はないし、普通に迷惑になるかもしれないし……と思って結局なにも動けずに扉の前に立って待っている。

「わっ、え…女子高生!?」

するとたまたま厨房から出てきた、優しそうな顔立ちをした高身長イケメンが扉の前に突っ立っていた私を見かけるなり目を丸くしてそう言った。