遊馬くんとお付き合いをしてから
2年半が過ぎた。

私たちは高校三年になった。
同じ時間を過ごして
遊馬くんは案外、独占欲が強いこととか
愛情表現や気持ちをストレートに言うところとか
見た目の印象とはだいぶ違うことはわかってきた


好きです
愛しています

二人きりのときは
そんな愛の言葉も日常会話のように
毎日ささやいてくれる。

いつもそばにいてくれて大切にしてくれて
2年半を過ぎても、二人で
同じ季節を繰り返し過ごしても
かわらず遊馬くんはやさしい。

ますます、スキが加速していく。

何度となく繰り返し会話をしても
同じ時間を過ごしても、好きが止まらない。


好きすぎてどうしたらいいかわからない。

ずっとそばにいたい・・


遊馬くんと過ごす時間が増えれば増えるほど
私のなかは遊馬くんでいっぱいになる。

きっと
今、私から遊馬くんがいなくなったら
さみしくて息もできなくなる。


付き合い始めたばかりの頃は、

人気者の遊馬くんだから
彼女ができたと話題になり
それが学年1のかわいい子でもなく
ましてや成績も優秀でもない
ふつうの私だったから
余計に注目を浴びてしまった。
学校では、
じろじろと見られたり
ほかのクラスの女子からもにらまれたり
付き合い始めたころは大変だった。

遊馬くんが
私がつらくないようにと気にかけてくれていたし
仲良しの友達もいたから

いつの間にか
噂も落ち着いて
今はもう誰もなにも言わなくなった。

いわゆる、公認となっているようだった。

高校1年から3年まで同じクラスになった私たち。

いつもクラスで遊馬くんの姿を見れることが
とても幸せだった。

放課後、部室から遊馬くんを見ることも
あたりまえのように登下校をすることも
すべて夢のようだった。
どこかで幸せだと、何かあるんじゃないかと思うくらいだった。


******



遊馬くんと過ごす初夏も三度目になった。

「ゆららは大学どうするの?」
ゆいちゃんに言われてすこし気分が重くなった。

3年になれば受験も現実味を帯びてきて
私も進路のことを考えなくてはいけなくなったんだなと改めて思う。
漠然と
遊馬くんと同じ大学にいけたらなんて思っていた。


だけど
遊馬くんは二年生だった昨年のインターハイも準優勝していたし
今年の最後の大会のインターハイもいい成績だせば
きっと陸上が強い大学に行くんじゃないかなと思っていた。

遊馬くんに聞いてもまだ決まっていないようだったし
「ゆららと同じ大学でいいです」
っていうばかりで

私もまだどうするか決まっていなかった。

「ゆららは絵が上手だし、この前もコンクールで入賞していたし、美大とかいくのかなって思っていたよ」
「うーん・・大学で本格的に学ぼうとまではまだ自分でもわからないし、それに美大も難しいしね。私そんなに実力あるわけじゃないから」
自分に実力があるとは思っていなかったし
ただ好きな気持ちだけで絵を描いていただけだから
美大の選択肢は考えていなかった。

・・・それに美大になると
遊馬くんと離れてしまう。

「佐倉くんは大学でも陸上するの?」
「うーん、そこまでははっきり聞いていないけど。一緒の大学いこうとは言われているよ」

「いいなぁ・・愛されてるなぁ。佐倉くんのゆららへの溺愛はすごいもんね」
「そ、そんなことないよ。‥そんな自信ない」

二年半、お付き合いしていても
いまだに私のどこがいいのかわからない。

一緒に歩けば
隣にいるのが私でいいのか・・・
いつも思う。

かっこいい遊馬くん・・
大学にいけばもっとモテる。

私なんてもしかしたらそのうち・・・

「ゆらら、またマイナス思考になってる。・・ゆららは自信もちなよ。ちゃんと選ばれているんだから」
「うーん・・・」
「まぁ、佐倉くんは確かに魅力的だよね。勉強もできるし、陸上でも実力はあるし、大会でも優勝もしているし、今度のインターハイにも出るのが決まってて、しかも性格もいい。そんな佐倉くんがゆららを選んでいるんだから自信もちなさい!」
「うん・・」
「佐倉くん、スポーツ推薦とかで大学いくのかと思ったけどね。二年の時、インターハイで準優勝とかしてるし、今年は優勝確実とか騒がれているしね。そういう話はあるのかと思ったけど・・」
「推薦とかその話、何も聞いていなんだよね・・・」


遊馬くんほどの実力があればスポーツ推薦の話があったとしてもおかしくないと思うのだけど・・
聞いてもはぐらかされたり、まだわからないとか言われたりして

ゆららと同じ大学にいきます・・
としか言ってくれない。

遊馬くんと一緒に大学行きたい
ずっと一緒にいられたらいいな

そう思うけれど・・
遊馬くんが陸上をするのなら陸上の強い大学にいってほしい。
遊馬くんが高く飛ぶ姿は本当にきれいで大好きだから
もっともっと高く飛んでほしい。