「ゆらら!まだいるの?」

「うん。もうすこしいる~」

「じゃ~お先に帰るね~おつかれ~」]

バイバーイと手を振り

部活仲間の美香と舞が部室から出た姿を見送り
わたしは、またキャンパスに向き合う。


夕日が差し込む美術教室で活動している美術部

部員は幽霊部員も含めるとかなり多いと聞いているけれど
実際に活動しているのは限られた人たち。

先輩後輩にこだわらないで、みんな仲良し。

実際、絵を描くより
お話をしていることも多い。

みんなといろんな話をして
 絵を描いたり
お菓子食べたり・・・

そんな時間を過ごせるこの美術部の雰囲気がとても好き

「森本さん、それじゃ、戸締りお願いね~」
「うん。河合さんもお疲れ様」
河合さんから鍵を受け取る。
美術部部長でもある河合さんは隣のクラスの女の子。
小さくて大きい二重の目がとてもかわいい。
それに、絵の才能もすごくて、彼女の描く水彩画は繊細なタッチで大好き。

誰もいなくなった部室には私の鉛筆の音しか響いていない。
こうして静かに一人で絵に集中する時間が好き。

だけど
なにより私が一番好きなのは・・・。


美術部のわたし・・森本ゆららは
時間を気にしながら
キャンパスに向かっていた。

あともうすこししたら・・・

大好きな声で私の名前を呼ばれる。
あの窓から・・・

どきどき

ドキドキ・・・

「うらら~!」
「遊馬くん!!」

グランド側の窓から声がしてふりむくと
大好きな人が立っていた。

陸上部のユニフォームのまま
大好きな笑顔で・・・


「練習終わるの??」
「もうすぐ終わりますよ。」

佐倉遊馬くん
私の大好きな人。
・・・・そして私の彼氏。

着替えて迎えに行くのでそれまでまっててくださいねと言い残してまたグランドへ戻っていった。

お付き合いしてもうすぐ二年と半年。
お付き合いはじめから遊馬くんは部活が終わるとこうして窓から覗き込んで
声をかけてくれる。

校舎の1階にあるこの美術室。
ここから見える遊馬くんの練習風景
窓際のこの場所から一番よく見える。

だからここは私の特等席。