窓越しから見えるソーダ水のような空の青さが眩しい。


この空を全部飲み干したら、幸せになれるのだろうか。


茹だるような暑さの中ハッとして、頭を振った。


そんなこと考えてる場合じゃない。考えてる暇があったらーー勉強しなければ。両親の反対を押し切って、祖母が大切にしてた店、癒やし屋を受け継ぐと決めたのだから。


“現代人はみんな何かしら疲れてるからねえ。だから、この癒やし屋があるのさ。

疲れたら癒さないとだめなんだよ。そこからどんどん広がって、心が沈んじゃうからね”



祖母が残してくれた言葉のひとつだ。よく自分を“夜明けの魔女”と名乗っていた。



私が意味を理解する前に、祖母は60という若さで亡くなった。おそらくこの先もずっと空白のまま……。


よく聞かせてくれた冒険記も、毎日作ってくれてた優しい味のしたおやつも、いつか忘れてしまうのだろうか。