社長の結婚騒動で一日がやたら長く感じた。

帰ろうとずしりと重い腰をあげて、階下に行くエレベーターを待つ。

開放されたドアの向こうには社長が一人。

いつもは秘書の寺川さんと一緒なのに。

「お疲れ様です。」

「お疲れさん。残業?」

「はい。社長、あの、ご結婚おめでとうございます。」

ちゃんと、言った。

今出来る精一杯の笑顔を向けて。

「、、、あぁ。どうも。」

なぜか、物凄くドライな返事。

質問攻めや挨拶回りで疲れたのかな?

「面倒くせ、、、」

ん?

なんでしょう?

今のはどちら様?

気のせい?

「無理矢理付き合わされてんの。いつまでもこんな茶番やってられっかよ。」

「、、、しゃ、社長、心の声が、も、漏れてますが?」

驚きすぎてしどろもどろになった。

いつもの爽やかで温厚な社長はいずこへ?

あ、もしかして、この方双子の弟かなんか?

本物は?