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出会い

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私がいつも通り、森でバイオリンを弾いていると、突然、背後から拍手が聞こえた。

驚いた私が振り返ると、そこには背の高い美しい青年が立っていた。

ダークブロンドの髪は軽くふんわりと風になびいている。

明るい鳶色の瞳はとても優しげで、口元はにっこりと口角を上げて微笑んでいる。

「フルーナ? 君がこんなにバイオリンの名手
だとは知らなかったよ。
もっと聴かせてくれないか?」

人懐っこく寄ってくる彼は誰なんだろう?

王女殿下を親しげに名前で呼べる人がいるなんて、聞いてない。

私が戸惑って立ち尽くしていると、首を傾げて私をじっと見た彼は、

「おや、もう忘れてしまった?
ハールだよ。
君は、フルーナじゃないのかい?」

と不思議そうな顔をする。

これはどうすればいいんだろう?

私は今、王女殿下と同じ姿で宮廷の庭にある森にいる。

王女でないと言ってしまえば、彼を知らない言い訳はできるけれど、王女と同じ容貌の人間が宮廷内に2人いると暴露することになる。

「あの、ごめんなさい、ハール。
私、少し前までいろいろあって寝込んで
いたので、それ以前のことをあまりよく
覚えていないの。
私、あなたとは親しかったのかしら。」

そのまま私をじっと見つめたハールは、ふっと優しげに笑った。

「いや、ただの顔見知りだよ。
君がうっかり忘れても仕方ない程度のね。
じゃあ、自己紹介しよう。
俺はハール。8月に28歳になったばかり。
独身。趣味は… 音楽を聴くこと。
君は?」

「私? 私は… 」

どうしよう。
王女殿下のことをそのまま話せばいいの?

「じゃあ、先に俺が知ってることを言おう。
君は、フルーナ。23歳。ダンスが得意。
そうそう、君も独身。
違う?」

「………違いません…けど… 」