「放せって言ってるだろ!」

「それは無理な話だ。
だが、おまえには危害は加えるなと言われている。
手荒な真似はしないから、おまえも無駄な抵抗はやめろ。」



確かに殴ったり、蹴られたりということはされてはいない。
ただ、後ろ手に縛られている。
馬車に乗せてもらってるのは、楽と言えば楽だけど…



(……こうなったら、もう俺に出来ることはない。
ええい!好きなようにしやがれ!)



俺は、抗うのをやめて目を閉じた。
このところ、ずっと追いかけまわされていたから、ろくに眠ることが出来なかった。
どこに連れて行かれるのかはわからないが、それまでは眠ろう。
そんなことを考えている間にも、瞼は重くなっていた。