「なかなか良いじゃないか。」

「そう…ですか?」

姿見がないからよくわからないけど…
男装のため、ネイサンさんのローブっぽい服とズボンを借りて、髪を一つに束ねて帽子をかぶった。
ちょっと恥ずかしかったけど、化粧も落としてすっぴんで。
背が高くて良かったよ。
歩き方も、男性を意識して大股で歩こう。



「そうだな…君は私の弟だということにしよう。」

「弟……それじゃあ、名前を変えないといけませんね。」

「なぜだ?カンナではいけないのか?」



え?……ってことは、『カンナ』を女の子の名前って感じないってことなのかな?



「い、いえ、おかしくなければ、カンナのままで……」

「何もおかしくはないと思うが…
そういえば、私はカンナという名を初めて聞いた。
ファーリンドでは、良くある名前なのか?」

「さ、さぁ…?」

どうなんだろう?
日本ではめちゃくちゃ珍しいってことはないとは思うけど、ここでのことはわからない。



「では、出発しよう。」

「はい。」

私たちは森を抜け、首都を目指した。
とにかく、身を隠すには人の多い場所に行くのが良いという考えからだ。
本当は身を隠す必要なんてないんだけど…でも、ネイサンさんに嘘を吐いてしまった以上、もう後には引けない。