「オスカー…奴は、本当にそのような怖ろしいことをやるだろうか?」

「間違いございません。
エドワード王ならばきっと…」

「……そうか。ならば、やはり許してはおけないな。」

「アルバート王子…本当にモルガーナへ行かれるおつもりなのですか?」

「あぁ。断じて、エドワードの思い通りにさせてはならぬ。
そんなことをさせたら、この美しい世界は滅びてしまう。」



見上げた空には、一際明るい満月が輝いていた。
ここのところ、エドワード王の周りには不穏な動きが見られる。
非常に危険な状況だ。



モルガーナに潜入させている我が国の間者の調べによれば、エドワードは、このファーリンド大陸を今もなお狙っているようだ。
海を隔てているだけに、今までの三度の侵攻は容易に食い止めることが出来た。
モルガーナは、侵攻の度に甚大な被害を被っているというのに、それでもエドワードは諦めない。



それどころか、あやつは遂に最悪の手段に打って出たのだ。
エドワードの狙いは、とうの昔に滅亡した『魔法』の復活だ。
あり得ない。
荒唐無稽な話だと最初は相手にもしなかったが、奴は、魔法使いの末裔を本当に見つけ出したという。