悠月と私は客室の倒れた物や



ダメになったものを分別していく。



警察には言えない



調べられたら
このお店もやばいらしいから



「なぁ、桃華」



悲しんでる悠月の声



あぁ、ほんとに悠月は
店長のことを大切にしていることが分かる。



「どうしたの?」



「店長は、何もしなくていいって言ったけど



俺は、頼りないか?」



悠月の気持ちに



答えきれずに声がつまる



悠月は、



本当は繊細な心を持っていて



店長が頼ってくれないことに
少し不安なんだろう。



「なぁ、桃華」



「どうしたの?」



「1人の馬鹿な少年の昔話を
聞いてくれないか」



「うん、いいよ。」



「その少年は
ある商店街の路地に居たんだ。



1人で、ひっそりと、
商店街の住人に見つからないように」



「うん」



「暫くしたら、その少年を
ある店の店長が見つけたんだよ。



くっそみたいに汚れた服と
馬鹿みたいに細くてヒョロい体で



見つけられたことに驚いて
猫みたいに警戒心バリバリで威嚇して」



こいつアホだよな。と



失笑しながら悠月は続ける。



「そいつは生きるために
商店街の物や盗んだりなんか色々してて



そんなアホなガキに、
商店街は優しく手を差し伸べてくれた。



そっから少年は
初めに見つけた店長の家で暮らして



少しずつ大きくなっていった。」



「その少年は幸せ者だね。」



「あぁ、そうだな。」



「うん。」