「やばい。どうしよう。嬉しい。」

入学式の日に見たときから、いつだって小暮の笑顔は偽物だった。
なにか悲しみを含んだようななんとも言えない笑顔。それでもきっと
本人は、頑張ったつもりなんだろう。でも、小暮は絶対に気を許した
相手じゃなければ本当の笑顔を見せないんだろう。そしてそれはきっと
榛名でもない誰か。
でも、今日カラオケの時小暮が俺に話してくれたことは本当に嬉しかった。
絶対に気を許そうとしなかった小暮が、自分のこと話してくれたから。

そして小暮と戻ったとき榛名の姉に呼ばれて話したんだ。

「小城くん、ありがとう!今日すごく嬉しかった。あのね、本当に内気で
人見知りな海波が入学式の次の日に小城くんと桜井くんと話したって
聞いてすっごくびっくりした。小城くんも分かるかもしれないけど
今の海波は本当に儚いの。絶対誰にも本心を見せようとはしないし、
心から笑うことがなくなった海波が、今日小城くんの隣でわずかに
笑ったあの時、少しだけど海波の本当の笑顔が見れたの!だから、
小城くんだったら海波のこと守ってあげられるんじゃないかって、
思ったの。もちろん同じクラスに蒼空だっているけどもしかしたら
小城くんなら、海波を救ってあげられるかもしれないの!
だから、お願い!」

その言葉を聞いた時俺は確信したんだ。小暮はきっと過去につらい体験を
した。多分その時から小暮は人に心を許すことが出来なくなったんだ。