「これが、あの白鳥さん……?」

台の上に置かれた遺体を見て、大河が言葉を失う。

数日前、藍たちにきれいな笑顔を向けていた女性は別人かと思うほどの姿になっていた。体中にじんましんができ、顔面や咽頭が腫れ上がっている。

如月刑事が解剖の依頼をしてきたのが、この変わり果てた白鳥うららだった。朝子は言葉を失い、監察医の田中聖(たなかひじり)も「これがあの女優なのか……?」と呟いている。

如月刑事がメモ帳を広げ、遺体発見の状況などを説明し始めた。

「白鳥うららさんは、「キャンプで作れる料理」という番組の撮影をした。山の中にあるバンガローで実際に料理を作って食べ、その後に呼吸困難や全身のじんましん、そして腹痛を訴えた。マネージャーの谷口玲子(たにぐちれいこ)さんが救急車を呼んだが、間に合わず亡くなった」

「……料理を作って食べ症状が出たということは、彼女はアナフィラキシーショックを起こした可能性が高いですね」

藍が遺体を観察しながら言う。原刑事が首を傾げながら、「アナフィ……?」と呟く。すぐに如月刑事の怒鳴り声が響いた。