「オ……オリオンって、オリオン座の?」

「オリオン座? 何を言っているのだ、お前は?」

恐る恐る尋ねる私に、オリオンと名乗るその男は荘厳な顔を崩さずに返した。

何を言っている……それは、私の台詞だ。
こいつこそ、ポセイドーンの子だとか何とか言って、どうかしている。
それに、彼のその恰好……毛皮の布一枚のみを纏って、手には棍棒なんか持って、頭がおかしいんじゃないか?

そんなことを考えた私はふと、今の自分の恰好……首から下を見た。

「キャ……キャアア!」

激しく動転した。
だって、私の服はあいつら……チャラ男達にビリビリに破られてブラも外されていて。
胸が露わになったままだったのだ。

「見ないでよ、見ないでぇ!」

私の脳裏には、あいつらの醜くて汚い顔が浮かんで……パニックになってひたすらに叫んだ。

嫌だ、怖い……!
私の頭の中でフラッシュバックした記憶に、私の全身はガタガタと震え始めた。

すると……私の肩にフサっとしたものがかけられた。

「これは……」

タオルじゃない……少しかたくて、だけれども、とっても温かい。

「シカの毛皮だ。私の隠れ家に着くまでの暫しの間、体を隠すといい」

オリオンは白い袋の口を締めた。

「隠れ家って……?」

「ここからそう、遠くはない。お前の着る物を作ってやる」

彼はそう言って、無骨な手でぶっきら棒に私の手を引いた。

「え……えぇ。ありがとう」

ちょっと優しい……?
こんな時なのに、私は少しだけドキっとして。
彼に対する不信感は拭いきれなかったけれど……私は彼に引かれてゴツゴツとした岩の上を歩いて行った。