どれだけ歩いただろう……私はオリオンを背負って、一つの場所を目指した。
それは、今いるこの世界で一番、信用できる女性のいる場所。彼女なら、オリオンの命を救うことができる……そう、信じていた。

私の手首の傷……それは、オリオンに血を分けた傷だ。
サソリに刺されたけれど息を吹き返した私の血液中には、毒を無毒化する成分が多くあって。オリオンに私の血を与えると治療効果がある。
そう、ガイアに教えてもらった。
だから、私は傷をオリオンの傷にくっつけて、僅かだけれど血を彼の体内に入れて……。オリオンはぐったりしたままだけれど、心なしか体温が戻ってきたように感じた。

手首の傷は疼くように痛んで……私の背負うオリオンの体重で足元はふらついた。自らの血を流しながらオリオンの中に入れた私は、倒れそうになっていた。

でも……私はこの体の血、全てを彼に差し出してもいい。どうしても、オリオンを救う。
そんな想いとともに、気力を振り絞ってアルテミスの泉へとひたすらに歩を進めた。