「ねぇ、オリオン。今日は何を狩りに行く?」

狩猟の女神であるアルテミスと、狩りの達人であるオリオンは、かつて、あの洞窟で一緒に暮らしていた。

「熊だな。三日月模様のあいつ、昨日は取り逃がしたからな」

「あら、私がいればそんなヘマはしなかったのに。置いて行ってしまうからでしょう」

「たわけ。お前は支度に時間がかかりすぎるのだ」

オリオンはいつものようにムスッと、無愛想に言い放つ。

「仕方ないじゃない。私だって、これでも女神なんだから」

「狩猟にそんなに派手な衣装は要らん。鹿の皮で充分だ」

オリオンはアルテミスの着ている翡翠色のシルクの服を見て、顔をしかめた。

「はい、はい。今日はもう、支度は済んだから。行くわよ!」

「ったく……ほら、出るぞ」

弓矢を背負うアルテミスに、オリオンはぶっきら棒に言い放つ。
しかし、恋人であるアルテミスには分かる。彼の表情はまんざらでもなかった。そう……オリオンのその様子は、恋人である彼女に完全に心を許してこその振る舞いだったのだ。

そんな彼と一緒に暮らすことは、アルテミスにとっては楽しくて仕方がなかった。ずっと、彼とこんな風に過ごしていける……彼女はそう、信じていた。