そうして、私は異世界での新年を迎えた。

 お店も数日間はお休みだったので、存分に昼寝をしたり、街を散歩したりした。

 楽しかったのは、新年のパレード。一日かけて街中を練り歩くもので、王族の乗った馬車と、きらびやかな格好をした兵士や踊り子たちが目を楽しませてくれた。楽器隊の演奏も見事で、もとの世界と似ているけど違うラッパ形の楽器や、トロンボーンのような伸びる楽器に釘付けになった。

 ウォルにもらったオルゴールに入っていた曲も演奏された。明るいけれど堂々とした雰囲気の曲で、この国で有名な曲なのかと思って近くにいた人にたずねたら、

「この国の第二国歌のような、人気のある曲だよ」

 と教えてくれた。

 三兄弟への贈り物のお返しも見つけた。三人おそろいの、カフスボタン。石が薔薇の形に彫刻してあって、これならドレス姿のクラレットでも使えそうだと思った。

 アッシュは青、セピアは白、クラレットには赤を買った。少しお値段は張ったけれど、気に入ってしまったのだから仕方ない。貯金は減ったけれど、もとの世界に帰るのが何日か遅れるくらいなら、まあいいかと思える。

 休みの間にあった心配事は、だれかにつけられているような気がしたことだ。外に出かけると視線を感じたり、お店のまわりに人がいるような気配がしたり。

 二階の窓から覗いたり、道で振り返ったりしてもだれもいないし、気のせいだと思うことにしているが、なんだか気味が悪い。

 この世界での知り合いは多くないし、まさかストーカーということもあるまい。

 休暇でひとりでいる時間が長かったから、さびしくなってしまったのかもしれない。ホームシックじゃなくてみんなに会いたくてさびしいなんて、完全にこの世界に毒されているけれど。