「ここが水の都スイレンか」
 
電車とバスを乗り継いで一週間、俺とレオンハルトはたった今スイレンに到着した。
 
いや〜一週間長かった。

ずっと電車やバスを乗り継いできたせいか、未だに体が左右に揺れている感覚に陥る。

「まずは予約してあるホテルに行くぞ。情報集めはその後だ」

「ああ、分かった」
 
スイレンの街並みを横目で流しながら、俺はレオンハルトの後を追いかける。

「それにしても流石だな。水の都って呼ばれるだけはある」
 
右を見ても左を見ても、どこもかしこも水があちこちに流れている。
 
街にある店には水魔法を得意とする魔道士たちが行き来していて、店頭には水に関連したさまざまな商品が並べられている。

広場には水を使ったイリュージョンショーや、水魔法の練習をしている魔道士がたくさん見られる。

「この街は水が豊富だからな。だから水に困ることなんてないんじゃないか?」

「そりゃそうだろ。こんだけ水が行き来してりゃ困るはずなんかないさ」
 
しかしなぜスイレンの街だけが、こんなにも水が豊かなのかは明らかにされていないんだ。

俺が生まれる前からずっとこの街は水の都って呼ばれていたし、特に気に留めることもなかったしな。

ただ屋敷にある魔法書の中に、そんなことが書かれていたことをふと思い出したんだ。

「お、ここだ」
 
目的のホテルの前で足を止めたレオンハルトに続いて、俺も歩く足を止めた。

そして目の前にそびえ立つ立派なホテルを目にして思わず頬を引きつらせた。

「……おい、レオンハルト君。これは何だ?」

「ん? 何ってホテルだろ?」
 
俺の質問に首を傾げて応えてくるこいつに、少し苛つきながら俺は口を開いた。