「……ん」
 
気がついて目を開くと、私は真っ暗な世界に立っていた。

「……ここ!」
 
光が差さない世界で一人だという事に気がついた時、徐々に体が震え始める。
 
私は手の平で星の涙を守るように覆い隠した。

そして目を瞬かせた時、目の前の景色が一瞬にして変わる。
 
真っ暗だった世界が真っ赤な世界に変わると、私の足元には血の海が広がっていた。

血の海は足首くらいまで深さがあり、私は目を丸くしてその海を見下ろした。

「い、いや!」
 
この光景に見覚えのあった私は恐怖で後退る。

そんな私の足首を誰かが掴んだ時、その拍子に私の体は後ろへと倒れ込んだ。

「きゃっ!」
 
尻餅を付いた時に軽い水しぶきが上がり、私はぎゅっと瞑っていた目を恐る恐る開いた。

そして私の目に飛び込んできた物は、血だらけの手が足首を掴んできている光景だった。
 
ボタボタと血を垂らしながら逃しまいと手に力が込められた事に、私の心臓が大きく跳ねた。

「ひっ!」
 
私は青い顔を浮かべた。

ブルブルと小さく小刻みに体も震え始めて目に涙が溜まった。
 
ボタボタと血を垂らすその手は、ふくらはぎ、太ももへと順番に伸ばされると、今度は胸元になる星の涙へと伸ばされた。

「い、いやああああ!!!」
 
何とかその手を払い除けて立ち上がり、私は反対方向に向かって走り出した。

「いや……いや!!」

恐怖と言う名の感情が私の体を支配し始めていた。
 
走り続ける私の足元には、血の海にぷかぷかと浮かぶ死体たちが浮かんでいた。
 
エアの末裔の人たち、お母様、ミューズ、ナイン、レオンハルトさん、ミリィ、そして――

「……っ!」
 
走り続けていた先に居た人物を見て私は足を止めた。