文久3年5月、京ーー


壬生浪士組屯所の門前。


柔らかな日差しに心和むなか、まるでそれを打ち壊すかのように1人の少女が現れた。


漆黒の艶髪に、真っ白な肌。


薔薇色の頬に唇。


凛とした大きな瞳に長い睫毛。


まるでこの世のものではないかのような、明らかに場違いの、不思議な空気をもっている。


門番の隊士は一瞬見惚れ、そして慌てて声をかけた。


「どうした?うちに何か用か?」


「局長に会わせて」


「は?」


意味がわからず呆気にとられる隊士。


少女は強い瞳をむけ、凛と澄んだ声で言った。


「私をここに、住まわせてほしいの」