「そうだったんですか、優香がそんなことを……」

雨で濡れた服をクリーニングサービスに出している間、私も水城さんもタオル地のガウンを着て、謝恩会の行われたホテルの一室で、私は事の真相をすべて水城さんから聞かされた。

「折を見て本当のことを俺の口からちゃんと説明するつもりだった。まさか、あんな形で梨花に邪魔されるとは……すまない、嫌な思いをさせた」

窓際にある小さな丸テーブルを挟んで、私と水城さんは向かい合わせに座っていた。先ほど水城さんが淹れてくれたホットコーヒーは、話を聞いている間にすっかり冷めきってしまっている。

チラッと窓の外を見ると、降り続けていた大雨も止んでいた。そして、近隣のビルからこぼれる照明が、湿気を帯びておぼろげに夜の街を照らしていた。

「水城さんが謝ることなんてないです。私が優香の話に乗ったりするから……でも、水城さんを傷つけるようなことにならなくて本当によかった」

騙すつもりが実はそうでなかったことに、私はホッとせずにはいられなかった。