目覚めると、いつもとは違う朝だってことを感覚的に捉えた。
気持ちが重くない。
毎朝どんよりとした気持ちと、低血圧で起きるまでに時間がかかるというのに。

立ち上がり、彼女が寝てるはずのベットに向かう。
だが、そこにあるはずの姿は既になくなっていた。

「ご安心を。
今、使用人の大塚と廊下の掃除をしています。
なぜそうなったのかはわかりませんが、莉子様はまだ屋敷内にいらっしゃいます。

楓馬様は出勤のご準備を進めてください」

どのタイミングで入ってきてたのかわからない。
でもそんなことを気にする関係でもない。
世話係にいちいちノックされていても面倒だし、信頼していると言っていい。

だけど、時々行きすぎなほどに世話を焼いてくる。
神谷は俺に対して過保護なんだよ。

莉子にだって、変な嘘ついて俺を殺しかけた。
何でもそつなくこなすけど、正直掴めない男。

「こちら、シャツをお持ちしました」

「あぁ」

着替えを促されるけど、まだベットの前から離れたくない。
こんなにすっきり目覚めたのはいつ以来だろう。
もう覚えてもない。

毛布か…。
まだ温もりがあるように錯覚する。