ノックをする手が震えた。
この部屋には何度も入ってるのに、すごく緊張する。

ソファーに座ったはいいけど、きょろきょろあちこちを見てしまう。全然落ち着かない。

「挙動不審だよ」

仕方ないでしょ。
同じ部屋で寝泊まりしてるとはいえ、私が使ってるのは部屋の左側。
楓馬君が使ってる右側には足を踏み入れないようにしてる。
踏み入れるとしても、咲さんと一緒に掃除をすることくらい。

楓馬君がいるとなると、それはもう別空間だ。

「だって、よく考えたらここ男の人の部屋だし、なんかそわそわするって言うか…。話って何ですか?」

「あー、それね。
ゆっくり行こうよ。夜は長いんだから。

男の部屋に来ておいて、すぐに帰れる訳ないじゃん。それくらいわかってたでしょ?」

「いや、だから、話があるって言ったから」

流されたら、絶対に危ない。
身体全身が危機感を察知している。