ガチャリ。

そんな音とともに、冷たさとずっしりとした重さが両手首にのしかかった。

…なに、これ?
目の前の光景がいまいち飲み込めない。

私はカフェでイチゴのタルトを食べてただけ。
ちょっと息抜きをしてただけじゃん。
いつもと何も変わらな時間を過ごしてた。

それなのになんで、手錠なんか掛けられてるの?

「あの…」

目の前に立つ、グレーのスーツを着た男性に問いかける。パッと見、20代前半に見える。色白で、丸い瞳。大学生だと言われても頷ける。

彼が、私に手錠をかけた本人。
名前も知らないどころか、会ったことすらない。

「あぁ。
手錠嵌められた理由?」

楽しそうにチェーンに指を絡め、ジャラジャラと金属音を鳴らしている。
その仕草が妙に色っぽく見えるのはどうしてなんだろう。